家庭用3Dプリンターのデメリット・人々の期待とはかけ離れた性能

3Dデータから立体を成形する機械「3Dプリンター」。2013年頃から一般家庭用の低価格製品が続々と発売され、一時はブームとなりました。現在も安価な家庭用3Dプリンターは販売されていますが、そのブームはいつの間にか落ち着きました。このブームが去った背景には家庭用3Dプリンターにデメリットが目立ったことがあります。

家庭用3Dプリンターのデメリット

3Dプリンター

物体をスキャンして、そのデータを利用してまったく同じ物を複製する…3Dプリントをこのように考えている人はあなただけではありません。これが3Dプリンターの理想なことは間違いありませんが… 3Dスキャナーや3D CADなどで作成した3Dデータから立体を成形する機械が3Dプリンターです。「未来の技術」「夢の技術」などと呼ばれることもありますが、実は研究が始まり、技術として確立したのは1980年代。意外に歴史がある技術です。その後、数種類の3Dプリント手法が開発され、産業用途で使われるようになりました。2000年代に入り、3Dプリントの特許が切れ始めると、低価格の3Dプリンターが販売されるようになり、2013年頃になると「3Dプリンター」という言葉がテレビから聞こえてこない日はないほどのブームが到来しました。家庭用の低価格プリンターが次々と市場に投入され、人々は、程度の差こそあれ、夢見ていた家庭用3Dプリンターを購入しましたが、やがてブームはフェードアウトしていきます。
この記事では、ブームが終わる背景にあると考えられる家庭用3Dプリンターの問題点(デメリット)について考えていきます。現在も安価な家庭用3Dプリンターは店頭に並んでいますが、デメリットはあまり解決されていません。

出力の品質

3Dデータから立体を成形出力する3Dプリンター。これは業務用も含め、3Dプリンターのもっとも重要であり、シンプルな目的なのですが、残念ながら家庭用3Dプリンターは、このもっとも重要な目的ですら達成できていないと考えるべき現状です。家庭用の3Dプリンターは熱溶解積層方式をほぼ採用しています。この造形方式はコストパフォーマンスが高いため家庭用マシンのメインとして使われているのですが、精度や強度、使用できる素材などがどうしても限定されてしまうのです。ブームの際、低価格の家庭用3Dプリンターを購入した人の中からは、その出力の品質に関するクレームが噴出しました。熱溶解積層方式で、機能をシンプルに抑えることで低価格を実現している家庭用3Dプリンターですが、出力品質というもっとも重要な部分で人々の満足を得られないことは、大きなデメリットと言えるでしょう。

フローにおける信頼性

3Dプリンターは造形するための機械ですから、3Dデータを使用して、そのデータ同様の物体を正確にプリントアウトしなければなりません。しかし、多くの家庭用3Dプリンターは、それができません。もちろん設定が正しくないということも考えられますが、それだけではない問題があるのです。たとえば、2Dプリンターでドキュメントや画像をプリントするときに、ずっとプリンターの前を離れずに間違いなくプリントされるかどうか監視する人はいません。たまには失敗もあるかもしれませんが、多くの場合は「プリント」ボタンを押すだけで出来上がりです。しかし、3Dプリンターの場合は違います。もちろん、そのままで出来上がりを待ってもいいのですが、ほとんどの場合、思っている物とは違うものが出力されるはずです。プリンターの前を離れたくないぐらい、実は家庭用3Dプリンターの信頼性は低いのです。3Dプリンター自体が備えている品質の問題だけではなく、ワークフローにも問題があるのではないかと考えられます。

フローのスピード感

家庭用3Dプリンターは、業務用の大型3Dプリンターと比較するとスペックの低さは仕方のないところ。そのため、作業フローにスピード感があるとは言えません。技術の進化が進み、作業フローのかなりの部分をコンピュータが行うようになれば、まだまだ改善可能だと考えられます。

材料のバリエーションが少ない

家庭用3Dプリンターは、材料のバリエーションが少ないことがデメリットとして挙げられます。ただ、これは成形方式がほぼ一つしかないということに問題の源があります。成形方式が少なければ少ないほど、材料のバリエーションは限られてしまうので、これはある意味宿命です。家庭用3Dプリンターでは樹脂系の材料しか使えません。成形方式のバリエーションの多い業務用の3Dプリンターであれば、金属を含む、さまざまな物質を材料として使うことが可能です。

強度(耐久性)

家庭用3Dプリンターで出力した物体は、強度の面で、古くから使われている射出などの方法で製造される物体よりも強度がありません。3Dプリンターで出力する物体は、層を重ねて立体として仕上げるので、射出のように物体全体にバランスのとれた強度を得ることが難しいのです。積み重ねた物体に横方向の力を加えてずらすことをイメージしてみてください。

表面仕上げ

家庭用3Dプリンターでは、繊細な表面仕上げをすることはできません。積み重ねる層の厚さが厚い家庭用3Dプリンターだけでは、表面をなめらかに美しく仕上げることはできない=あとで手作業や薬品の力を借りて加工しなければならないのです。業務用の3Dプリンターになると積層ピッチが薄くなるので、かなり美しく表面仕上げすることが可能です。

市場が確立していない(ターゲット的な問題)

すでに触れたとおり、家庭用3Dプリンターは過去にブームになったことがあります。しかし、その人気は今ご紹介しているとおり、家庭用製品自体にさまざまな問題があったこと、そして材料や周辺サービスを含む市場が確立していなかったことで、いつの間にかフェイドアウトしてしまいました。
ブームに任せてまったく製品を投入したことが、結果的には悪い影響を与えてしまったと言えるかもしれません。現在、家庭用3Dプリンターを購入する人たちはニッチなカスタマーであって、2Dプリンターのようにほとんどすべての家にある代物とは訳が違うことを業界は真剣に考えるべきだったのかもしれません。ビジネスが優先された結果、市場が育たなかった。業界は家庭用3Dプリンターについて、そのテクノロジーや製品の在り方も含めて解決していかなければならないでしょう。

人々の期待と性能の剥離

3Dプリンターがブームになったとき、人々はそのテクノロジーが身近になったことに歓喜しました。しかし、家庭用3Dプリンターは、いざフタを開けてみるとほぼ実用に耐えないもので、不満の声があちこちから聞こえてきました。
その頃、多くの人々は、3Dプリンターが物体を忠実に成形してくれると考えていました。いや、仕上げが少し雑になっても、おそらく形にはなるだろうと考えていた人が大部分でしょう。しかし、実際は違いました。成形クオリティの低さは、人々の期待を完全に裏切りました。




家庭用3Dプリンターのデメリット・まとめ

ご紹介してきたように、家庭用3Dプリンターには解決しなければならない問題があります。3Dプリンターブームの頃、人々はその家庭への到来に歓喜しましたが、残念ながらそれは幻だったとしか言えません。現在、業務用3Dプリンターは技術革新が進み、売り上げも伸びています。家庭用3Dプリンターも人々のニーズに合った製品作りをすることで、いつの日か本当の意味で家庭に3Dプリンターが設置される日が来ることを待ち望んでいます。